Chapter22
裃を脱ぐ
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やる気のある電話

その会社で働くと病気になってしまうようなら、そんな病気は生理学上の病気とは言わない。(中略)自尊心を損なうような仕事の状態は、それ自体が病んでいる。

病気がよくなったといって電話をかけてくる人は、自尊心を高める仕事をすぐにでもやりたいといつも考えている、やる気のある人である。 (232p)

仕事が自分を高めてくれるとわかっているなら、人はその仕事を進んで行う。管理者はその仕事がいかに重要で、大切なのかを説けばよい。ということは、逆にその仕事が自分の評価を低くすると考えているなら、人はその仕事を進んで行うことはしない。むしろ一日でも早くその仕事から抜け出すことを考えるだろう。だから、管理者があれこれ詳細に指示を下し、あきらかに信用していないという態度をしてはならない。

信頼して仕事につけたからには、その人から自分を守る手段を講じる必要はない。すべての部下は信頼できる仕事をしているのだ。自主的なチームの中では、信頼できない人はいてはならない。 (233p)

プロジェクトが失敗するかどうか、なんていうことは実はそれを担当しているメンバー自身がよくわかっていることである。だがそれでも失敗をして大きな損失をこうむってしまうのは、管理者がその状況にあえて目をつぶって、ほとんどありえない可能性に賭けるからである。そういう管理者だとわかっていれば、メンバーは大本営発表のような内容の報告しかあげなくなるものである。

チームを信頼し、チームの生殺与奪を彼ら自身にゆだねる。チームメンバーは信頼を裏切るようなことがあった場合、自分達に責任があったことを素直に認めるであろう。自分達を信頼してくれた管理者の評価が下がってしまったのだ。次は絶対に失敗しないように、信頼を裏切ることのないように努力するだろう。しかし、管理者がかき回したあげく、その責任を自分達のせいにされてしまったなら、その責任すべてに納得ができるだろうか。そして、次の仕事に対して努力しようとするだろうか。絶対にない。より負担のない軽い仕事を望むはずだ。だれもリスクの大きい新しいやり方の仕事をしようとはしなくなるだろう。でも、それでもそのような管理者の下では、おそらく失敗することにはなるだろうが。

缶詰作戦

缶詰作戦とは、チームメンバーに対しオフィス以外で仕事をするように伝え、金を渡し(あるいは適当な宿泊地を借り)、後は任せることである。部下がよけいなことをしていないかどうか監視することが管理者の役割だと思っていれば、このようなことはばかげているとしか思えないだろう。しかし、仕事をしているかどうかは簡単に判断できる。できた成果物をみればよいだけだ。

能率を上げるには、完全に自分達の思いのままにできる場所と時間を与えるのである。そうすると、さらにまとまったチームへと結束していく。 (236p)

規則は破るためにある

管理者は自分の命令に従うか従わないで部下の評価をきめてはならない。従わない部下の方がむしろ管理者にとっては財産となる場合もある。指示に従わなかったからといって部下を注意するのではなく、その命令に対する根拠に対して意見を述べさせ、納得させる必要がある。指示に逆らっているということは、自分で判断をしているという自主性があるということである。その自主性をよっぽどのことがない限りは削いではならない。削いでしまうと、ただの盲従ロボットになってしまう。管理者が間違っていても誰もそれを止めようとはしないだろう。

市場がないと判断された製品の開発を中止しようとした。けれども従業員の冷静な判断が次第に優勢になり、けっきょくそれを完成させてしまった。結果は大成功だった。プロジェクトを抹殺しようとして失敗した管理者は、これを記念して「年間一等不服従賞」と刻んだメダルを、そのチームに与えた。 (237p)

唇のあるチキン

効率のよいチームというのは、気心の知れた仲良しグループである。仲良しグループというと厳しさが欠けているように思われるが、チーム内で厳しさを持ってしまうと、チーム内のコミュニケーションがスムーズにいかなくなる。あまりの厳しさに萎縮しているメンバーが一人でもいれば、もはやそのチームは彼がネックになっていくだろう。それはチームメンバー全員にとって不幸なことではあるが、もっとも不幸なのはそのネックになった人である。彼はますます萎縮して、自分が嫌になってしまうだろう。

非常にまとまったグループといっしょに仕事をしたことがあったが、このグループのメンバーは、共通の性格をいくつも持ち始めた。特に挙げておきたいのは似たようなユーモアのセンスを持っていたことだ。メンバーはユーモアを共有する感覚を身につけた。その感覚とは、あるものをみんなが訳もなくおかしいと感じることである。(中略)ある日、グループの新しいメンバーの採用オーディションがあった。応募者が帰った後で、仲間の一人がこう評した。「知識の点では申し分ないが、唇をつけたチキンがおかしいってことがわかるようになるかな?」その応募者は採用されなかった。 (238p)

人は仕事の内容よりも、誰と仕事がしたいのかによって動かされる。逆にいえば、仕事の内容よりも誰と仕事がしたくないかということによっても動かされるということでもある。

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