Chapter20
チーム殺し、七つの秘訣
Teamcide

以下に述べる七つの要因は、確実にチームを崩壊させる。チームが崩壊するということは、チームとしてひとつのものを作り上げることができないということを意味している。当然ながらそれは生産性に直結する。しかし、これから述べる七つの要因はいずれも身近に見られるものばかりである。

1 自己防衛的な管理

この原則が最もチーム殺しに有効である。自己防衛的管理とは、管理者が作業員の失敗を恐れるあまり過度にチームの作業に干渉することである。管理者は自分は能力があると思い込んでおり、チームのメンバーは無能だと考えている。だから、失敗を恐れてすべての作業内容についてチェックを行おうとする。もちろん、そんなことは不可能なので、まったく中途半端なチェックしかできない。しかし、それによって失敗したとしても、管理者はその原因をすべて、作業員の無能のせいにするのだ。なぜなら、自分は彼らよりも有能だから。

チームのメンバーは、新しいシステム設計で顧客の承認を取り付けていなかったので、(コンサルタントである私は)小言をくらわせたのだ。チームは全員シュンとなった。とうとう一人が言った。「顧客にこの資料を見せるべきだとは思っていたのです。けれども、上司は、自分の承認がなければプロジェクト以外の人には何も見せてはいけないと強く規制したのです」数ヶ月分のもの仕事が上司の書類受けに山積みになっているくらい、上司は仕事に忙殺されている、と彼女は続けた。(中略)最終的に顧客に提示したとき、決して合格をもらえないものを作っているということを十分知りながら、チームメンバーは、ただせっせと夜遅くまで働いていたのだ。 (219p)

この上司は部下を信頼していなかった。部下の失敗が自分の立場を悪くすることを恐れていた。自分自身の判断だけが正しくて、他人のは疑わしかったのだ。あなたが管理者だとしたら、自分の判断は部下の判断よりよいと思うに決まっている。 (219p)

いったんチームのメンバーを決めたら、最良の戦術は部下を信頼することである。その部下では駄目だと判断したら、別の部下に交代させたほうがよい。確かにその部下に仕事を任せたことによる責任を問われることにはなるだろう。しかし、だからといってそのまま続けていけば、失敗することはまず間違いない。

2 官僚主義

官僚主義は、各構成員が恣意的な判断に基づいて行動するのではなく、マニュアルによって管理されることである。マニュアルや上層部の指示がなければ動けない。よって突発的な事態、例えば「阪神大震災」のような事態に対応することはできない。官僚主義になると、その集団の構成員は上層部の一部を除き、思考を停止する。自分の仕事に対しての誇りもなくなる。ただし、その集団に属しているということに関しては、奇妙に執着しているようだ。

頭を使わないでどんどんドキュメントを作ることは人間の能力の浪費である。(中略)ドキュメント作成屋には成功するために何が何でもやるという気はないのである。 (222p)

官僚主義集団の構成員は、自分の仕事の本当の意味がよくわかっていない。ただ、やれといわれればやる。それだけだ。管理者の口癖はこうだ。「とにかくやってくれ」「君にそんな権限はない。私の言うことを聞きなさい。」だが、彼らの言うとおりにやって失敗したとしても彼らが責任を取ってくれるというわけではない。

3 作業場所の分散

たくさんの人間がひとつの整合性がとれたものを作り上げるのに、電話だけで用が済むなんてことはない。いっしょに仕事をしていく上で重要なのは、仕事上の関係だけでなく、より私的なまとまりが必要なのである。ある集団が仕事以外の話をしなくなったら、その集団の構成員は帰属感を感じることはないだろう。そうなれば、その集団のために何かをしようという気にもならないかもしれない。だから、より私的な内容が話せるように作業場所は分散してはならない。

(分断されると)同一グループ内の人達との結束は強くならないが、よく顔を合わせるというだけで、隣近所のほかのグループの人達とは仲良くなって結束していく。 (222P)

作業者が同じチームにいる時は、同じ時間帯では静かにすることが多いから、精神集中を妨げられることはない。

4 時間の分断

よくパラで作業するなどといわれる。一人の作業員が複数のプロジェクトを受け持っていることである。もちろん、管理者はこれでもかまわないが、実際に作業をしている集団の構成員にこれをやらせるとかえって効率が落ちる。なぜなら、一人の人が二つ以上の集団に対して帰属しているという意識をもつことは不可能だからだ。

時間を分断された集団は結束しない。悲しいことに個人の時間が必要以上に分断されていることが見過ごされている。 (224p)

5 品質低減製品

品質はどうでもよいからなんとか期日に間に合わせよと、管理者がいってくれることはない。品質をしっかりさせて、期日には間に合わせるように。と必ず言ってくるはずである。そんな期日ではまともに開発できないと作業員が感じ始めたると、テストを省略し、何とか動いてくれるように、奇跡に頼るようになり始める。しかし、本来のテストを省略することで、おそらくまともに動く可能性が低いと感じている作業員はやがてお互いに目をあわせることを避け始める。

自分達がやっていることをやめられるなら、救われた気持ちになると、みんなが感じ始めていることがわかっている。プロジェクトの終わりには、そのグループのメンバーと別れ、別のもっとよい仕事につけるように全力を傾ける。 (224p)

6 さばを読んだ納期

極端に短い納期が即、チームを解体に追いこむということはない。むしろ短い納期がかえって彼らの結束を固めることになる可能性もある。いままで述べてきたようにそのプロジェクトが極めて挑戦的で、それを成功させることによって大きな栄誉が与えられるなら、チームは一丸となる可能性を秘めている。しかし、管理者が自分の点数を稼ぐために納期にさばを読んでしまった場合、あるいはチームがそういう認識をした場合、もはや誰もそのプロジェクトを積極的に成功させようという気にはならないだろう。

(さばをよむ管理者が)作業者にいいたいことの本心ははっきりしている。つまり、管理者は、部下の意見を尊重することや、一人一人のことを考えてやるといった気持ちがまったくない。まるで無表情のロボットである。管理者は、部下が脅迫されてやる以外は、何一つとして仕事をしないと信じている。 (226p)

7 チーム解体の方針

ひとつのプロジェクトを完了させてしまった後に、すぐにチームを解体させてしまうことが極めて大きなロスにつながっている。ひとつのシステムをやり終えた後に、同じチームで新たなシステムを作成しようとすれば、前回よりもより効率的に作ることができるはずである。しかし、管理者はどうもうまくいっているチームほど解体させたいみたいだ。なぜなら、彼らが派閥をつくってしまうのではないかという不安を抱くからである。

「うちのチームのトップときた日にゃ、チームに関心を持つのは、チームを解散させようとするときだけなんだ」。 (226p)

あるいは、そういう人員の配置や頻繁な座席レイアウトの変更をすることくらいしか、やることがないのだろうか。かえって、それらは生産性を悪化させているかもしれないのに。

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