Chapter17
自己修復システム
The Self-Healing System

システムが自動化されると、そのシステムは全て決定論的システムになる。すなわちある規則に基づいた同じことの反復作業となる。このシステムにおいては規則にのっとった作業は劇的にコストが向上する。しかし、その一方でその規則以外の例外的な処理が扱いにくくなる。例外処理が増えれば増えるほどかえってコストは増大するだろう。手作業で行っていれば、例外処理だけでなく新たな状況が発生した場合に柔軟に対応することができる。システムのほころびを埋めることができるこのようなシステムを自己修復システムと呼ぶ。

システム開発の世界では、いかにシステム開発を決定論的にするかということがはやりのようだ。システムを自動化することで、人間の能力に関係なくそれなりの質の仕事ができるようになれば、どんなにすばらしいことだろう。そのために必要なのは作業の規定化なのだ!しかし・・・。

作業規定とは、どうやってあらゆる種類の頭脳集約型の作業を、ある決まったやり方に誘導するべきかについてかかれた一般的システム指導書である。

(190p)

作業規定は、有能な人が守らされた場合、彼らに特にひどいダメージを与える。これらは、作業を固定的な型に押し込めようとする。その結果、確実に起きることは、

(192p)

書類を作るなというわけではない。書類を作れば作るほどいいと思っていることが間違っているのだ。体裁や量にこだわってはならない。本当に必要なものを、もっとも少なく作ることが大切だ。だが、作業規定を作っていくとなると、この書類はどんどん増えていくことになる。どうでもいいような書類が山のようにできるだろう。膨大な紙の塊は膨大なコストが必要になる。それは、作ることよりも、有効な内容に維持していくことの方が大きな負担になる。

作業規定の中心となっているのは、作業手法の標準化である。どんなプロジェクトにでももっとも効率的に採用できる作業手法であれば、標準化してもよいが、そんなものはない。作業手法も日々進化し変化している状態では、標準化は慎重に行う必要がある。安易に標準化を行ってしまうと、定められた作業手法以外の手法がまったく使用されなくなり、その会社は取り残されるであろう。

プロジェクトがうまく行かない場合、それは作業規定の問題にされる。なぜなら、作業員は作業規定以外の行為がまったくできないからである。上司に「君にそんな権限はない。作業規定どおりに仕事をしなさい」などといわれて、いったいどうやって責任をとれというのか。

上司に「君にそんな権限はない。作業規定どおりに仕事をしなさい。」といわれるということは、上司が作業員をまったく信用していないということである。はっきり言えば、「君は無能だ」ということを知らせているようなものである。そうやって行う作業に対してやる気がわくはずがない。どうせその作業がうまくいったとしても、自分の能力にはなんら関係ないからである。なにか新たな発想や工夫をしようなどとは絶対に思わないだろう。

上記に述べたように、作業手法は重要である。でなければ、プロジェクトは間違いなく混乱する。しかし、作業手法を作業規定という強引なやり方で押し付けても駄目である。ではどうすべきか。うまいやり方は次の三つである。

規則の制定はこうした穏やかに誘導された手法を統一的に使用するようになった暁に考えればよい。規格は、それが事実上の標準になるまでは公布すべきではない。 (196p)

経営学の有名な発見のひとつにホーソン効果というものがある。それまでの経営学は、効率的に作業を行うための機械の物理的な配置や、作業員の作業に対する計測によって能率を向上させることが主であった。その考えに基づき、ある工場で照明が作業に対してどのように影響するか、ということを計測しようとした。だが、予想に反して照明をいくら暗くしても、まったく作業効率が下がらなかった。なぜか?それは計測されていた人達が、計測されていることに誇りを感じ、チーム全体が自然にまとまっていたからである。つまり、人間の心理が作業効率に大きく働いていたのだ。

人は、他と違った扱いを受けることに魅力を感じ、注目されることを好み、珍しいものに好奇心を寄せる。これはその後、ホーソン効果と呼ばれるようになった。つまり、ホーソン効果は、人は何か新しいことをやろうとしたとき、それをよりよくやろうとする、ことを示している。

仕事にホーソン効果をもたらすには、標準でないルールを使って仕事に取り組めるようにしなければならない。どんな標準であろうと、それは簡潔で穏やかなものでなければならない。作業者に強いる規格は、10ページ以下でなければならない。(これは突飛な話ではない。法規集のように分厚い作業規定を作ったものの、適用をあきらめた多くの組織では、それを最終的に10ページの規格マニュアルにしてしまった)。このようなゆるい指導書さえも、例外を認める道を用意しておかなければならない。 (198p)

どんな作業手法も完璧でない。ソフトウェア開発成熟度モデル(CMM)にしてもISO9000にしても、それがたんなる紙の固まり製造モデルになってしまう可能性は十分に秘めている。結局、成功と不成功を左右するのは、それを担当する担当者のやる気であり、標準的なやり方でない挑戦的な仕事である。管理者は部下の失敗を恐れず挑戦させることが大切である。失敗を恐れ極度に介入すると、作業員はまったく動かなくなってしまい、自分で問題を解決していくことができなくなってしまう。

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